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海が枯れる 温暖化で忍び寄る危機




地球温暖化のなかで日本の豊かな海が失われつつあります。

水深3メートル。豊かに生い茂る海草の群落、藻場(海中林)です。 「海のゆりかご」と呼ばれ、多くの命を育んでいます。 しかし、その藻場が日本各地の海から急速に消え始めています。 理由のひとつとして指摘されているのが地球温暖化。 海草の生長が阻害されるだけではなく、活発に動き回るようになった魚やウニに食べられてしまうのです(食害)。 心配されているのが漁業への影響です。 果たして、消えた藻場をとり戻すことはできるのか。海からの報告です。

藻場に入る海草の多くは大型で多年生のものです。 コンブやホンダワラ、アラメやカジメなどです。 この藻場には、アワビやサザエ、エビなどが生息し、 また、私たちに馴染みの深いアジや鯛、カレイなどの産卵場所でもあります。 つまり藻場は、私たちの食卓と密接なつながりのある場所なのです。

ところが「海のゆりかご」と呼ばれていますこの藻場が、今、消えつつあります。 水産白書によりますと、1977年から1998年の20年の間に、65,000ヘクタール、30%の減少。 また、海のある39の都道府県に藻場について聞き取り調査を3年前に行ったところ、 33の都道府県が、「藻場が消失した」あるいは「藻場が減少している」と答えています。

33の都道府県の海岸線を赤で示しています。
この藻場が消えることによって、漁獲量の減少が危惧されています。

藻場が減少した海岸線
 

藻場、あるいは干潟に依存してしている水産資源の漁獲量の推移をグラフで表しました。
1987年、94万トンあまりあった漁獲量、2006年には40%近くも減少しています。

水産資源の漁獲量の推移
 



藻場が消える


なぜ、全国各地の藻場が次第に消えていっているのか。 海洋汚染や埋め立てなどに加えて、地球温暖化が大きな要因になっているものとみられています。

静岡県の最南端、御前崎です。 かつてこの海には、広さ8千ヘクタール、日本最大ともいわれる藻場が広かっていました。

先月中旬(2008年6月)、この海に潜ってみました。 水深3メートルの海底に広がるのは、岩ばかりです。 藻場はどこにも見当たりません。

これは1992年に、同じ海で撮影されたものです。
カジメやサガラメといった海草が広がる豊かな藻場でした。
それが1999年までに全部消えてしまったのです。

カジメやサガラメといった海草が広がる豊かな藻場

提供:静岡県水産技術研究所

 

長年、この海を見てきた静岡県水産技術研究所の長谷川雅俊室長にとっても信じがたい出来事でした。
長谷川さんは海に潜り、藻場がなくなった海域の観察を始めることにしました。 そこで長谷川さんは、奇妙な海草を数多くみつけました。 葉だけでなく、茎までなくなった海草です。 いったい何が起きたのか。

静岡県では、8月から11月にかけて水中にカメラを設置し、原因を探りました。 映し出されていたのは、アイゴやイスズミなど、 暖かい海を好む魚が群がって海草を食べる姿でした。

静岡県水産技術研究所、長谷川雅俊室長
食べるスピードなり量が、かなり多いということで、ショックを受けました。


本当に魚が被害を拡大させたのでしょうか。 魚の食欲について研究している海洋生物環境研究所(千葉県 御宿町)です。 ここでは、魚の食欲が海水温の変化によってどう変わるか研究しています。

実験では、藻場で海草を食べていたアイゴを使いました。 水槽の温度を秋に見立て17℃にした時には、アイゴは動きが鈍くほとんど海草を食べません。 しかし、水温が20℃の時は、活発に動き回り、一匹が一日におよそ20グラム食べていました。 更に水温が高くなると、アイゴはより多くの海草を食べることも判ってきました。

静岡県水産技術研究所の長谷川雅俊室長です。
藻場が消えた理由を知るために、海草の成長サイクルとアイゴの食欲の変化を重ね合わせて見ることにしました。

御前崎の藻場を作るカジメは、秋から春にかけて成長します。 翌年の秋には、落ち葉のように落葉し、その下から新しい葉を出します。 この時、20℃よりも低い水温でないと新しい葉を伸ばすことができません。 一方、水温が低い秋。アイゴはカジメをほとんど食べません。

ところが、御前崎周辺では1990年以降、11月の水温が20℃を超える年が続いていました。 水温が高いためカジメは成長できません。その上、アイゴの食欲は旺盛です。 アイゴの食害が続いたことで、藻場が食べつくされてしまったのではないかと、長谷川さんはみています。

静岡県水産技術研究所、長谷川雅俊室長
海草にとっては二重の影響を受けるということになります。 水温の上昇は、アイゴの食害に影響を与えて、 ひいいては、カジメの衰退にも影響を与えるという結果になります。


今、全国の沿岸部で藻場が消えています。
九州北部、玄界灘では、魚の食害に加えて、更なる要因が被害を広げています。 海草がなくなった岩場に、ウニが無数に繁殖していたのです。 南方系のウニなど、さまざまな種類が繁殖し、わずかに残った海草を食べ尽くしていると考えられているのです。

なぜ、藻場はなくなった海でウニが大量発生したのか。 東北大学の谷口和也教授は、そのメカニズムを調べてきました。

谷口さんの研究では、豊かな藻場では、海草からウニの発生を抑える物質が分泌されることが判っています。 ところが、藻場がなくなると、無節サンゴモ という石灰質の藻が広がります。 その藻からは、ウニの発生を促進する物質が分泌され、 大量繁殖につながるというのです。 しかし、このウニは、餌となる海草が十分でないため、身を太らせることができません。

拍車がかかる藻場の消失。豊かな漁場が失われています。




海が枯れる 忍び寄る危機


絶妙のバランスの中で藻場が生きて繁殖していた。 それが崩れると、ウニが大量繁殖する異様な光景になってしまうんですね。

東北大学 谷口和也教授
そうなんです。 今、海中林が世界的規模で、どんどん崩壊しています。 その結果、ウニがどんどん増えてしまっている。

更に、暖流化・温暖化して、熱帯性の、或いは亜熱帯性の魚類が海草を食う魚類が沢山日本の沿岸で食害を起こしている。 ウニと南方系の魚類が藻場を食い尽くしているという現象が、今、起こっています。 まさに、絶妙なバランス、海草と動物を含めた生態系のバランスが崩れていると言ってよいと思います。

また、この地球温暖化ということを前提にして考えれば、 これまで、低気圧がそれほど大きな影響を与えていなかったのが、 爆弾低気圧、というかたちで、これまで崩壊していなかった藻場そのものを、 剥ぎ取ってしまう、そういう事態も特に日本海中心に起こっています。




藻場消失と温暖化


藻場はなぜ消失しているのか。 埋め立てや海水汚染というようなことも要因となっていますが、地球の温暖化による影響ですけども。 実際に日本沿岸の海水温というのは上昇していますか。

東北大学 谷口和也教授
はい。 私の実感では明らかに上昇していると思います。 例えば、宮城県松島湾が、かつて70年前の水温と現在の水温と比較すると、年平均で1.5℃も上がっています。

特に重大なのは、1月から3月の冬の水温が3℃も上がってます。 それに対して夏は、0.5℃しか上がっていない。 冬の3℃の上昇というのは、多くの海草は、秋から翌年の春にかけて発芽し成長するのですが、 この高水温は、特に北方系の海草にとっては、極めて大きなダメージを与えていると思います。


このように温度が上昇すると、海草にとっての難しい環境としてはどういうことが起きやすいのか。

東北大学 谷口和也教授
水温が高くなると、人間もそうなんですけれども、当然新陳代謝が高くなりますね。 となると栄養を沢山要求します。これは海草も同じなんです。

海草というのは根から栄養を取るのではなくて、 体全体で波に動きながら、動くことによって初めて海中から栄養を取ることができるのです。 ところが、水温が高くなるというのは、同時に、栄養が少ない水になってきているということが最近明らかになってきています。

実は、栄養は、深い海、海洋深層水から浅い海に供給されています。 海草は水深0メートルから50メートル程度しか成育することができませんから、 深い海から栄養豊かな水が供給されないと成長できなくなってしまいます。 それが、実は、気温が高くなって海面が温められて、その結果軽い水になって、栄養豊かな深い水が上に上がってこない。 その結果、まず栄養不足になる。 ということが最近の海洋物理学の知見によって明らかになってきています。

また、この地球温暖化によって起こっていることは、異常気象で大雨が降るようになる。 それは、海面の水が非常に塩分濃度が下がる。益々軽い水になってします。 そういうことからも深層水との交流が絶たれていると考えられています。


このままの状態が続いていけば水産庁は藻場の面積は1990年代に比べて半分になると試算しています。 藻場の消失をなんとか食い止めることができないのか。全国で様々な模索が行われています。




藻場回復への模索 対策1 海草を移植せよ


海草を移植することで藻場を再生しようという取り組みが始まっています。
大分県佐伯市では、漁師が中心になって6種類の海草、400株を移植しています。 この地域で藻場が消えた原因は、ウニの食害でした。 移植したエリアへのウニの侵入を防ぐため、 丸めた網をフェンスのようにして囲っています。 去年(2007年)移植した海草からは、新たな海草も繁殖しています。

漁師 戸高留治さん
私たちが努力してて、次の世代にこの海がよくなるんであれば、努力していきたいと思ってます。




藻場回復への模索 対策2 魚の食害を防げ


魚の食害を防ぐための対策も始まっています。
静岡県では6年前に対策プロジェクトを発足させました。 藻場を回復させるために試行錯誤を繰り返しています。

まず試したのが、移植した海草を金網で覆い魚なら守る方法です。 しかし、海に沈めたところ金網に多くの生物が付着してしましました。 そのため、金網の中まで十分な光が入らず海草は育つことができませんでした。

現在静岡県が力を入れているのは、海草を移植したエリアで食害を起こしている魚の絶対量を減らすことです。 今までは網にかかっても海に戻していたアイゴやイスズミなどを全て駆除しているのです。 アイゴには毒針があり、捕ってもなかなか収入にはなりません。 しかし、藻場を回復させるためには、最も有効だとして取り組んでいます。

御前崎周辺では、消失した8千ヘクタールのうち55ヘクタールの藻場がこの4年で回復しました。

静岡県水産振興室 海野幸雄さん
8千から比べればまだまだ小さいわけですが、 一度ゼロになってますので、ゼロからの55ということで、 小さな一歩ではあるけどもかなり大きな一歩ではないか、 というふうに思っています。


魚を寄せ付けないことで藻場を守ろうとしているところもあります。(和歌山県串本町の事例) 和歌山県水産試験場では、水中にスピーカーを設置、 音でアイゴを撃退しようと研究を続けています。

定期的に音を鳴らし、魚を追い払おうとしているのです。 水産試験場では、撃退効果を高めようと様々な音で実験を繰り返してきました。 アシカやイルカなど、海洋生物の鳴き声の他、 ライオンが吼える声など200種類を超える音でアイゴの反応を調べてきました。 和歌山県では、今年の秋に海での実用化を目指しています。




藻場回復への模索 対策3 栄養与えて藻場再生


水温が上がる海に栄養を与え、藻場を再生しようという取り組みもあります。
日本海に面した北海道泊村は、かつて豊かな昆布の漁場でした。 しかし、ここ数年昆布が激減し、去年は漁ができませんでした。 そこで、北海道と地元漁協では、栄養分となる窒素やリンを含んだ液体肥料を 小さな入り江に投入し、海水に混ぜ合わせる実験をしています。 3月の調査では、この入り江の栄養分の濃度は、試験前に比べ30倍以上上昇していました。 ウニの駆除も進めたことで、衰退していた入り江の昆布はかつてのような出来になったといいます。 こうした変化に地元漁師も手ごたえを感じています。




どう進める藻場の回復


海に肥料を蒔くというプロジェクトには谷口さん自身も係わっていらっしゃるんですけども、 肥料を蒔くことによって他の生態系への影響は出ないだろうか、 或いは、広い海に肥料を蒔いても果たしてコストと効果というのは、 合うのだろうか、いろいろ考えてしまいますけども。

東北大学 谷口和也教授
1月から3月に限定して栄養分を蒔くということで、ほとんど影響はないと思います。 使う材料は、生ゴミや多くの廃棄物を再生して資源化して使うということですので、コスト的には問題がないと思います。 しかも、蒔く場所もかなり限定された場所ですので、そういう点では環境問題は全く起こらないと我々は考えています。 しかも、今、海中林を回復させてやらなければいけない、 藻場を回復させねばならない、そのために最後の切り札としてこれを考えたいと思っています。

実は、これを考え付いたのは、多くの排水口なんです。 一つは、ヒラメの養殖の排水口のそばに昆布が生えていたということと、 全く生えていない、最も汚いと思われる港の排水口のそばに昆布が生えていた。 そういった事実がこれのヒントになったということです。


しかし、海水温の上昇によって海草にとって生きる環境が悪化している。 なかなか人間の手ではそれを改善することはできないなかで、この藻場の回復に向けて何をしなければいけないのか、 どういう取り組みが必要ですか。

東北大学 谷口和也教授
これまで多くの努力を行ってきました。 その努力をまず検証してこの栄養源の添加も含めて、実際に海草が生えるしくみ、 その技術体系をつくり上げることだと思います。 そのためには、まず魚を駆除したり、或いは、排除したり、ウニを駆除したり、食害をまず排除すると同時に、 今、海草が成育する条件がなくなっているものを回復させてやるために、 栄養源の添加も含めたシステムを作っていくことが必要ではないかと思っています。

海中林には陸上の森林以上に高い二酸化炭素の固定能力があります。 これが失われてしまうということは、 我々は地球温暖化をさらに進行させていくことになってしまうということで、大変危惧しております。

 

02 July 2008
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