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中国・転換のとき、社会を変えるか「新人類」


編集:2010.04.26
掲載:2010.04.27



経済大国への道をこの30年間ひた走ってきた中国は、今転換の時を向かえています。 経済の成長モデルの大転換。 豊かさを求めてきた人々の意識の変換。 そして、これまでと全く違う価値観を持つ新たな世代の登場。

中国を変えるか「新人類」

今中国社会を動かす新たな力として注目を集めるバーリンホウ(80后)。 1980年代生まれの若者達です。 ひとりっ子政策の下で育ち、改革・解放による豊かさを享受してきました。 自己中心的と批判される一方、常識に捕らわれない行動力で存在感を示しています。 その数2億人にも及びます。 ネット世代の若い人たち。 これまでの比べものにならないほど、多くの情報に接し、その考え方、行動力、更にはネットを通して時には当局を厳しく批判することで中国社会の中で無視できない存在になってきました。 若い人たちの声といえば、かつて天安門広場で当時の20代の1960年代生まれの人たちが、民主化を求め、そして力で押さえつけられたことが記憶に残りますが、 今の20代のバーリンホウの人たちは、自分達にとってより住み良い社会を求め、 ネット空間で巧みにその声を発信し、そして中国社会の中で自己実現に挑んでいます。

中国を変える「新人類」の衝撃

文化・芸能・スポーツ。 様々な分野で活躍するバーリンホウ。 それまでの慣習や価値観に縛られない生き方が特徴です。

若くして莫大な富を得た王シンイン(IT企業家)さん28歳。 インターネットビジネスで成功を納め、個人資産は6億円に及びます。 王さんが開設したショッピングサイトです。 人気の日本の化粧品などを揃え、旺盛な消費意欲を持つ若者を引き付けています。

王さん

  • これからも、ますます多くの若者がネットショッピングを利用するでしょう。シェアも売上もまだまだ伸びますよ。

厳重に警備された上海郊外の高級住宅街。 王さんは2年前、ここに1億円の邸宅を購入しました。 国有企業で働いていた親の世代では考えられなかった暮らしです。

小学生の頃からコンピューターのプログラミングを学んだ王さん。 周りと同じ生き方はしたくないと中学卒業後15歳で起業する道を選びました。

王さん

  • バーリンホウは、自分が正しいと思った道を必ず進むのです。たとえ失敗しても後悔はしません。

 

政治の世界でも異例の若さで重要なポストに就くバーリンホウが現れています。 28歳の夏佳さん。雲南省昆明市人民政府・監察局副局長です。 夏さんは、公共事業の入札制度の改革を進める責任者。 部下のほとんどが40歳以上の年上です。 今の仕事に就く前は、裁判官を務めていた夏さん。 地元の中国共産党委員会が2年前に始めた幹部候補生の全国募集に応募。 選ばれました。

中国でも先駆的なこの制度。 30歳以下、大学卒業、という条件で採用した若者を通常であれば20年以上かかる副局長級のポストに就ける試みです。 20代で幹部となり、様々なしがらみがない夏さん。 中国全土で深刻化する汚職の防止を任されました。 昆明市でもここ数年入札を巡る汚職で幹部の逮捕が相次いでいます。 バーリンホウの夏さんは慣習に捕らわれません。 それぞれの部署が抱え込んできた入札を新設される部署に一元化。 透明性を高めようと考えています。

夏さん

  • 党からこのような機会を与えられた以上りっぱに職責を果たし任務を全うする決意です。

 

抜群の知名度を誇るバーリンホウがいます。
ハンハン(韓寒)さん。28歳。 中国トップクラスのカーレーサーです。 今年(2010年)アメリカのタイム誌が選ぶ「世界に影響力のある100人」の候補に挙げられています。 ハンハン(韓寒)さんが一躍注目を集めたきっかけは、17歳の時実は作家としてのデビューでした。 若者のありのままの姿を描いた作品が200万部の大ヒット。 それ以来ハンハン(韓寒)さんは、バーリンホウの象徴となったのです。

そのハンハン(韓寒)さんが4年前に開設したブログ。 アクセス数は3億を超え、中国のネット社会で最も影響力のあるブログの一つです。 チベット問題に対して強硬な姿勢をとる当局について皮肉を言ってみたり、 役人の腐敗をちゃかしてみたり、 社会の現実に対する憂いや怒りを綴った文章が格差に喘ぐ若者や不満を抱える若者たちに指示されているのです。 今も言論が厳しく制限されている中国でぎりぎりの発言を続けるハンハン(韓寒)さん。

ハンハン(韓寒)さん

  • 恐らく多くの人は、私の文章を読んで日ごろの鬱憤を晴らしているのだと思います。 私のブログはいわば公衆便所のようなものだと思っています。 あわてて駆け込んで用を足してほっとする。 そして公衆便所があって本当によかったと気づくのです。 勿論、それがあるからといって生活が大きく変わるわけではありません。 でも同時に、トイレに行かなければ人間は死んでしまいます。 それに、街中で辺り構わず用を足してしまうと社会は困ってしまう。 そのためにも公衆便所は必要なのです。
  • 我々バーリンホウは新しい世代の人間です。 簡単に騙されたり変な思想に左右されるようなことはありません。 私たちは世界情勢についてもちゃんと知っていますし、正しいことと間違ってることもきっちりと理解しています。 ただ残念ながら、現状を打開することは出来ないと思います。 なぜなら、中国では権力は監視されるしくみになっていないからです。 この国で権力の不正を監視する力を持っているは政府の腐敗摘発部門だけです。 しかしそれは、独立した機関ではありません。 香港では、腐敗を摘発する部門は権力から独立しています。 しかし、中国本土では権力の傘下にあるのです。 裁判所も同じ状況ですからあてになりません。 頼るべきマスメディアはというと、これも政府のコントロール下にあります。 ですからこの国では、権力は事実上誰からも監督されていないのです。 こういう状況では短期間で現状を変えるというのは無理でしょう。
  • 私がバーリンホウの象徴だとは思いません。 バーリンホウの多くは、私よりもかなり苦労をしています。 経済発展の恩恵を十分に受けている人たちではありません。 恩恵を受けていることといえば、ネットを通した情報ぐらいです。 バーリンホウは大学を卒業して社会人になったばかりの人がほとんどですから、権力もありませんし地位もありません。 ただ、私たちは外に向かって訴えかける声は持っています。
  • 中国の経済成長を支えているのは不動産です。 豊かになっているのは不動産価格が上がり続けているからです。 ところがその影で、バーリンホウの人たちは苦しんでいます。 一生働いても自分の家を持つことすら出来ない状況なのです。 この国にいる一握りのお金持ちや既得権益を持つ人たち、権力がある人たちは、自分たちで利益を溜め込むのではなく困っている人たちに譲って欲しいと思います。 現在の社会の貧富の差、格差はとっても大きくなりすぎています。 それにこの国は、天然資源を大量に消費し安い労働力や貴重な土地や環境を消費し過ぎています。 国民は経済最優先を望んでいるわけではありません。 それよりも経済成長を少し犠牲にしてでも、皆が穏やかに暮らせる、上からの圧力が小さい公平で公正な社会となることを望んでいるのだと思います。

 

かつては、わがまま、自己中心的の代名詞だったバーリンホウ。 そのイメージを大きく変えたのが2008年の四川大地震でした。 多くの若者達がそれまで中国には馴染みの薄かったボランティアとして被災地へ赴いたのです。

四川大地震以降、市民活動に携わるバーリンホウは増え続けています。 2009年北京で開かれた環境NGOの全国大会。 出席者の8割を占めたのは20代でした。 若者達に共通するのは社会の役に立ちたいという公共意識の芽生えです。

環境NGOのリーダー、張亜東さん25歳。 水質汚染の実態をインターネットで発信しています。 政府への批判も辞さない姿勢は海外でも高く評価されています。

張さんが活動を始めたきっかけは、2005年に起きた化学工場爆発事故。 有害物質が川に流れ出し、ロシアまで汚染は広がりましたが、当局は情報を全て公開しようとはしませんでした。 当時大学生だった張さんは、ネットを通じて海外の環境NGOから情報を得る一方、自らも流域を調査。 インターネットを通じて汚染の実態を告発したのです。

張さん

  • 政府の対策は不十分です。私たちが草の根レベルで集めるデータこそ紛れも無い事実なのです。

張さんは今、情報を発信するだけでなく、汚染をなくすため具体的な行動にも乗り出しています。 住民からの情報で発見した川の汚染。 近くの食品工場からの排水でした。 環境保護局を訪ね対策を求めましたが担当者は取り合おうとしません。 当局を動かすには住民との連携が必要だと、張さんは集会を開きました。 しかし住民達は、当局を動かすことは難しいと諦めムード。 張さんは、団結して交渉を続ければ当局が動く可能性はある、と粘り強く説得を続けました。

 

モノ言う世代、中国を変えるか

ハンハン(韓寒)さん

  • 確かに四川大地震をきっかけにバーリンホウに対する世間の見方が変わったことは確かです。 ただ、バーリンホウがあの地震をきっかけに変わったということではありません。 バーリンホウはもともと社会的な活動をする意欲を持った世代なのです。 ただ、表立って活動することがこれまで出来なかったのです。 中国では、正しいと思う行動も非難されたり誤解されたりすることがよくあります。 国を変えたいと思ってもデモは出来ません。 そんなことをしたら逮捕されてしまいます。 だからこれまでは、バーリンホウの姿あが目立つことはありませんでした。 そういう意味では、四川大地震は被災者の救援と言う名の下で堂々と行動を起こすよいきっかけになったともいえます。
  • 中国の国民は誰しも社会正義の実現を希望していると思います。 ただ、バーリンホウはその想いがひと際強いのだと思います。 60年代、70年代生まれの人々は、かつて様々な権利を得ようとして立ち上がり、大きな代償を払わされた苦い経験を持っています。 いまだにその時のことは公に語られることはありませんし、その人たちの気持ちも理解できます。 ただ、時間が経つにつれてこの世代の一部の人たちも既得権益を持つようになり、社会の権力を握る人もいます。 お金があって権力があれば、愛人もできる。 そうすると考え方も変わってしまいます。 でも、バーリンホウは何も持っていません。 我々は、様々な権利を持ちたいと声を上げ続けるしかないのです。
  • 求めている権利がどんなものか? 多くの若者がお金以外のものを得たい、持つべきだと思っています。 他の国であれば当たり前に持つことができる国民としての権利。 それを今よりもっと欲しいということです。
  • 60年代生まれの人は、今では既得権益を持つ人になってしまいました。 では、我々はどうか。 20年30年経って彼らと同じ年齢になった時、彼らとは違い既得権益を持たず今のままのバーリンホウでいることを私は願っています。 中国が進歩するということは、その様な社会を創り出すことなのだと思います。

 

中国の将来を担う2億人のバーリンホウの人たち。 経済成長重視の中で、成長のあり方は間違っていないか、 富は公平に分配されているのかといった問いかけをためらうことなくネットを通して挙げ初めています。 転換点を向かえた中国はこうした声にどのように向き合っていくのでしょうか。

 

Posted 27 Apr. 2010
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